龍音寺はここから始まった。

龍音寺を開寺へと

導いた夢のおつげ


■不思議な夢の導き

昭和61年の冬、高橋晴彦住職は、三日間にわたって同じ夢を見た。

 

夢の中で高橋住職は小高い丘に登っている。
目の前にはなめらかな稜線を描く三つの山。
それを眺めながら手木魚を叩き、お経を読み続けていた。
そしてお経が終わる頃、感極まり、とめどなく涙を流すのである。

 

誠に不可思議な夢だった。普通なら「単なる夢」と忘れ去られることだろう。
だが、高橋住職も坊守の智子さんもそれを単なる夢と思うことができなかった。

 

「おそらく、自分はそういう場所に行く運命なのではないか…」そんな思いが心に宿り続けた。

 

その予感が現実に変わったのは、翌年1月、夢を見てからわずか二週間後のことである。

その日、大分県庄の原地区に法要に訪れた高橋住職は、目の前に夢と同じ風景が広がっていることに気づいた。
「3つの山…まさかここは…!」
しかし周囲に小高い丘はない。だが檀家さんに聞いてみると驚きの答えが返ってきた。
「ここからは見えないが、奥の藪の向こう側に小高いなだらかな丘がある。」と。

 

どうやら古墳のようだ。だが、その丘こそが夢に出てきたあの場所ではないか…。

 

高橋住職は竹をかき分けながら藪の中へと足を進めた。
しばらく行くと、その先に古墳らしきものが見える。
何かに導かれるように頂へと駆け上がると、探していた景色がそこに広がっていた。
本来、山は5つあるはずだが、そこに立つと前後の山の稜線がぴたりと重なり、山が3つになるのだ。

 

「見つけたぞ…ここだ」

 

高橋住職は無心で手木魚を叩きながら経を詠んだ。
瞼からあふれる熱い涙が頬を伝って流れ落ちる。
だが、涙を拭うことも忘れてお経をあげ続けた。

 

すべてが夢の通りだった。

 


■龍音寺開寺への道のり

高橋住職は人生の転機を感じていた。
「この地に移り、お堂を作ってこの古墳の供養をする!」

もちろん周囲の猛反対を受けたが、高橋住職の決心は決して揺らがなかった。

「これはきっと私の天命なのだ」
高橋住職は、まさに身一つ、熱い使命感だけを胸に抱えてこの地に移り住む決意をした。

 


電気はおろか道さえも通っていない未開の地、苦労は承知の上だった。
しかし、この地でもう一つ不思議な出会いが高橋住職を待っていたのである。
またしてもそれは「夢のおつげ」だった。

 

高橋住職は供養する祠を建てるため、古墳周辺の土地を管理する地主T氏を訪ねた。
すると、初めて訪ねたにも関わらず、彼は高橋住職の顔を見た瞬間にこう言ったのである。
「あなたが来るのを待っていました」と。

 

理由はこうだった。

 

T氏の亡父I氏の夢枕に、ある日金の龍が出てきた。
縁起のいい金の龍にI氏は願い事を伝えたが、
龍は「お前の願い事を叶えよう。その代わり必ず自分を祀るように」と答えたと言う。

 

I氏はその龍に「そなたは誰なのか」と訪ねた。

すると龍は「我は蓬莱の主である」と答えたのである。

 

その後I氏の願いは見事に叶ったが、金の龍との約束を成し遂げることが出来ず、
その遺志は息子のT氏に託された。

 

T氏は亡き父の想いを受け継ぎ、この古墳をお祀りできる人間を待っていたのだ。

 

その後T氏の全面協力のもと、高橋住職は、古墳を祀る小さな祠を創り、道を切り拓いた。
電気、水道もなく、汗にまみれて開墾を続ける毎日だったが、
高橋住職の胸には希望の輝きが満ち溢れていた。


■今もこれからも金の龍が見守り続ける

そして一年後の昭和63年10月30日、宗教法人「龍音寺」が産声をあげる。
その後墓地を創ってほしいという地域の熱い要望に応え、龍音寺霊園も開園した。

 

住職の人柄が評判を呼び、一般の主婦から経営者まで様々な人々を対象とした「心の学校」を本堂で開校した。

近隣に高速道路が通り、地域の開発も進んだ。蓬莱山古墳はパワースポットとして話題を呼び、
龍音寺にはたくさんの人が訪れ、寺は活気にあふれていく。

 

なぜ高橋住職にあの夢のおつげがあったのか、その理由は分からない。
だが、住職は今改めて確信している。

夢のお告げの金の龍が、今日も古墳の頂きから人々の幸せな日々と、やすらかな眠りを見守っていると――。


■龍音寺の「龍」を探そう!

龍音寺のいろいろなところに龍が潜んでいます。
ご見学の際はぜひチェックしてみましょう♪

●美しい彫刻を施した巨大な龍の香炉

●龍の絵が描かれた大皿


●本堂の入口でも水鉢を守る龍がお出迎え

●夢のお告げのエピソードを絵に表した

龍音寺のマーク